東京高等裁判所 昭和34年(ラ)723号 決定
本件競売事件の記録によれば、競売裁判所は、鑑定人真柄幸雄の評価書により、本件で競落不許可となつた建物(以下本件建物という。)の最低競売価額を八五〇、〇〇〇円(本屋七九〇、〇〇〇円附属建物六〇、〇〇〇円)、右建物とともに本件競売の目的物となつていた他の建物一棟及び宅地一筆の最低競売価額をそれぞれ四二〇、〇〇〇円及び七七一、〇〇〇円として昭和三十四年一月三十日を第一回競売期日と定めた、ところがその後右裁判所はこの期日を同年四月十六日に延期したが、その期日の公告には最低競売価額として本件建物は八〇〇、〇〇〇円他の建物及び宅地はそれぞれ四〇〇、〇〇〇円及び七二〇、〇〇〇円と記載された、そして同期日には競買人がなかつたので裁判所は同年五月十五日を新競売期日と定めたが、同日の公告にも最低競売価額は右と同額に記載された、この期日は同年六月十六日に延期されたが、その公告も同様であり、同期日にも競買人がなかつたので、裁判所は最低競売価額を本件建物は七二〇、〇〇〇円他の建物は三六〇、〇〇〇円、宅地は六四八、〇〇〇円にそれぞれ低減して同年七月十六日を競売期日と定めた、ところが同期日にも競買人がなかつたので、裁判所は次回競売期日を同年八月十七日と定め、さらにこれを同年九月十六日に延期したが、その競売の公告には、最低競売価額として本件建物は六四、八〇〇円他の建物は三二四、〇〇〇円、宅地は五八三、二〇〇円と記載され、右九月十六日の競売期日においては、右宅地については競買の申出がなく、本件建物は六四、八〇〇円他の建物は三二四、〇〇〇円をもつて抗告人が最高価競買人となつたことが認められる。そして右九月十六日の競売期日の公告においては、他の建物及び宅地の最低競売価額はいずれも前回に比し丁度一割の低減であるにもかかわらず、本件建物のそれは一割以下に低減されているが、右の経過と、本件建物についてもその最低競売価額を他の二物件と同様前回の価額の一割減とすることとして計算すれば六四八、〇〇〇円となること及び本件建物は木造木皮葺二階建店舗一棟建坪六十六坪四合三勺、二階坪五坪四合一勺、附属建物木造瓦葺二階建物置一棟建坪七坪五合二階七坪五合、以上延坪数八十六坪八合四勺であるのに対し、これに隣接する他の右建物は木造木皮葺二階建店舗一棟建坪三十二坪二合二勺二階六坪八合三勺延坪数三十九坪五勺でその坪数において本件建物の二分の一にも満たないのにその最低競売価額が三二四、〇〇〇円であることを考えあわせると、右公告に六四、八〇〇円とあるのは明らかに六四八、〇〇〇円とすべきを単位を誤り記載したものであることが推認される。これによつてみれば右九月十六日の競売における本件建物の最低競売価額の公告には明白な誤謬があつたものというべきであり、しかもこの公告は公告としては不適法であつて真正な最低競売価額の記載がなかつたことに帰するから、競売法第三十二条第二項により任意競売手続に準用される民事訴訟法第六百七十二条第四号に該当する違法があるものといわなければならない。のみならず右によれば本件建物は真実の最低競売価額以下の価額で競売されたことになるから、右同条第三号にいわゆる法律上の売却条件に違反して競買をなした場合にも該当するものというべきである。
(川喜多 小沢 位野木)